わたしは名ばかりの“彼女”。



最後に彼の口から『紗絢』と聞いたのは、いつだったか。



もはや見慣れた光景にフッと自嘲的な笑みを零し、踵を返した。



いくら待てども彼の目に映らない。


所詮はただの、通行人Aだった。