「俺はしのちゃんが欲しいものは全部あげたい。

しのちゃんはそう思ってくれてるのかなって」


なお君が欲しいものを全部?






「あ……え~っそう言うこと?」


「俺そういうの経験ないから分かんないけど、

 そろそろ先に進みたいって思うのってさ……早くはないかなって、


…しのちゃんは考えたことない?」



「キスとかその先とか……?」


「うん。」


「なお君は考えてるんだ?」



「そりゃ、俺は男だから。


退うちゃう?


 しのちゃんはそう言うのダメな人?」


「だめ……じゃないけど……」


「今すぐっていうんじゃないけど、


嫌じゃないなら覚悟しておいて欲しい。

学祭の時旅行に誘ってるのも、

ちょっとは前に進めるかなっていう下心がある」


こういうことは避けて通れないものだし、

私は直君が好きだし、

先に進んでもいいって思ってる。


好奇心もある。


でも、私は逃げずにいられるかな?


俯いて返事ができない私をなお君はどんな風に思っているんだろうか、


横に視線を感じながらまだ残る缶ジュースの奥底をじっと見つめていた。




「臆病なの。私……」


「うん」


「だから、こういう話に、即答できない。」


「そっか」



「でも、なお君が好き。


だから、そう言うのできるならなお君とって……


でも、いざとなったら逃げちゃうかもしれない。


そしたらまた前みたいに気まずくなりそうで、それが怖い」


「うん……分かった」


そう言って黙ってしまった。



分かったって何が?

なお君はどう感じてるの?


グシャッ


思い切り缶を握りつぶした音がして、

設置してある屑かごに力いっぱい放り込んだ。