ショコラノアール~運命の恋~

「きみでしょ?夏尾シェフのとこの子って?」

「はい。」

急に声を掛けられたので戸惑っていると、

ぶはっ

と、大きく吹き出して、


「あの人の弟子だって言うから期待してたけど、

大したことないねえ。

何あの地味でダサいケーキ。

よく恥ずかしくなくこんなとこに来たよね?


シェフもなんだってこんな子を弟子になんてしたんだろ。


あ~、女の子だからかな。


ねえ、色じかけでもした?


そう言えば奥さんて年上の実業家だったっけ。


淋しさでも紛らわしてんのかな?


女はいいよね、実力なくてもちょっと泣いたり色仕掛けすれば、

特別扱いされるんだから。


でも、色気……ないねえ?」


ぴらんと私のTシャツを引いて胸元をあらわにした。


「何するんですか!」


『あ、悪い悪い、もしかしたら男かと思ったから。

 一応あるんだね。驚いた」


こんな見ず知らずの人にセクハラまがいなことされて、

半泣きになりながら反抗した。


「やめてっ」


「いい加減にしなさい」


私の間に割って入ったのはさっき主催者のあいさつをした、出版社の人でした。


「君のやっていることは訴えられても文句は言えないよ。


いくらこの子が気になるからってやりすぎだよ」


「冗談。こんなのに全然興味ないし。」


はっ


と大きく息を吐き立ち去った。


「全くしょうがないな」


その人はそんな彼を苦々しい表情で見送った。


「君の作品、地味だったけど、

 仕事が丁寧で好感のもてる一品だったね」


「ありがとうございます」