パパにとって、メールでいつものように、
『帰らない』で済ます程度のことなのかと思ったら、

体から力が抜けてしまいそう。


「詩信……どうした」

「なんで……陽くんなの?

陽くんの前で泣くなんて嫌なのに……」

「詩信……なんで……」 

陽くんは意地悪で、ワガママで、自己中で、大嫌いだった……でも、

私が泣いているとき、

いつも側にいてくれたのも陽くんだった

「陽くんなんて大嫌いなんだから……」

「ったく、素直じゃねえな、
まあ、ツンデレきらいじゃないけどな。」

抱きすくめられて、ふんわり香る、
パパのかおり。


「!
このシャツ、パパのじゃない!」

「ちょっと借りたんだよ。」

「駄目だから、私がパパにかってあげたばっかのやつよ、脱いで脱いで!」

「ばっか、こんなとこで脱げっかよ」

「ダメったらダメ!」

「わかったわかった、
家かえったら脱ぐって、」

「絶対だからね!」

「ファザコン!」

「うっさい!」

心臓がばくばくする。

あぶないあぶない、
もう少しで雰囲気に流される所だった。

パパの香りに助けられたよ。良かったー。

何だかんだで家に帰るきっかけにもなった。

正直、ファザコンなのは確かなのだ。
パパは、唯一無二の私の拠り所だったから。

シャツのことは正直大した問題じゃない。

一瞬揺らいだ自分からの逃避する口実だ。