「どうぞ。

おじいちゃんたちの時代に建てた古い家だから、

自慢できるようなうちじゃないけど」


古いって言ったって、

古きよき時代の建築物だ。

当時かなり大きい立派な家だったんだと思う。


「お邪魔します」


彼女の後ろから入っていくと、

玄関には、

彼女の言うアイツが立っていた。


「おかえり」


「さっきはどうも」

絶対聞こえているうはずなのに
それに対して答えることなく、

ムスッとしたまま俺の方を見ようとしない。


しのちゃんも、アイツを無視して、


「こっちだから」


そう言って手招きした。

「あ、うん」

俺の存在をすごく気にしてるんだと思う。

「待てって!」

怒気のある声でどなった。


俺の横を通り抜けしのちゃんの手をつかんで、

怒った顔で、彼女を見つめた。


彼女はそれに応戦するように、

黙ってにらみ返した。


シンとした空気

カチカチと刻む柱時計の音はやけに大きくて、

何とかしろと言ってるみたいだ。



「何よ」


その瞬間膠着は緩み


「いや、ごめん……」


あいつは手を下して、項垂れ、

そのまま奥の部屋へ行ってしまった。