ショコラノアール~運命の恋~

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「お疲れさまでした。」

タイムカードを押して、

事務所を出ようとすると、

いつものように、にこにこしながら、

さっちゃんさんがおいでおいでをする。


嫌な予感。

「宮君、この後、時間あるわよね」

「ええと、ないわけじゃないんですが」

「大丈夫、一個だけ!伝書鳩便、積み残し発生しちゃって!

 帰りがけに置いて行ってくれればいいから、

 受け取りだけもらって、

 バイクは明日返せばいいし、ね?おねがい?」


「ああ、まあいいですよ」

さっちゃんさんの頼みは、

よっぽどの理由がない限り、断れない。

それに伝書鳩便はそうとういところではないから。

伝書鳩便とはいわゆるバイク便の定期便。

市内会社同士のドアTOドア便、契約している会社同士しか使えないが、

その日のうちに、着くため便利らしい。


「はいこれお願い」

「お、重っ、

これ何が入ってるんですか?」


「何か精密機械って書いてあるかな?」

「お、俺なんかが運んで大丈夫なんですかね?」

「……気をつけて運んでね?」


な、なんなんだ今の間は、

 傷付けたらやばいってことかよ。そりゃあまあ気をつけて運ぶけどさ。

バイクの荷物ボックスに入れて固定する。

良かった入るサイズで。


バックを斜めにかけてメットを被り、

エンジンを掛ける。

春にはまだ早い風を切りながら、

早くも心は、この後彼女に店に行けることで、

頭の中は閉められていた。