もちろん、覚えてる。
それがプロポーズの言葉ではなかったけど、まるで結婚しようと言ってくれたみたいで、嬉しかったっけ。
「そういう話は、ここでは出来ません」
あくまで事務的に答えると、聖也も負けじと応戦してきた。
「じゃあ、プライベートで連絡くれませんか?花井さんが連絡をくれないから、こうやって話をしてるんです」
まったく、聖也のこういう部分には、圭介と似たところを感じる。
ただの25歳ではないということだ。
だけど、わたしだって負けてない。
「取材のアポがないなら、もう電話を切らせてもらいますが?」
すると、深いため息が聞こえてきた。
「負けました。今日の午後、空いてますか?旅館に来て頂きたいのですが」
「もちろんです。午後一番で伺わせてもらいます」

