どんな人と、どんな恋をしたのか分からないし、怖くて聞く勇気もないけど、きっとここには思い出があるんじゃないかな。
そんな風に思う。
もしかしたら、栞里さんも同じなのかも。
だから、あんな硬い表情をしていたんだ。
「圭介、わたし次はプライベートでここに来たい」
呟く様に言うと、圭介は優しく笑ってくれた。
「オレも来たいよ、もう一度。もちろん、陽菜と」
そうよ。
圭介に切ない過去があったとしても、今が幸せならいいはず。
幸せを、わたしが与えられれば、それでいいのよ。
圭介の過去に目を背けてるんじゃない。
今と未来を見る。
それだけ…。
それからわたしたちは残りの取材を終え、オフィスへと戻ったのだった。

