優しいカレの切ない隠し事



どうしよう…。

声をかけてもいいのかな。

迷いながら立ち尽くしていると、小さくため息をついた圭介が身を翻した。

その瞬間、思い切り目が合ってしまったのだった。

「あれ?陽菜。いつからいたんだよ」

驚いた様に目を見開く圭介に、わたしはぎこちないながらも笑顔を浮かべた。

「たった今。それより、絵馬がたくさんあるんだね?」

ゆっくりと近付くと、圭介も足を止め絵馬の方へ振り返った。

「ああ。ほとんどが、結婚前のカップルの絵馬だな」

「へぇ…」

確かに、見えるものだけでも『結婚が出来ますように』と漏れなく書いてある。

思えば、ここは縁結びの神社だ。

これまでに、圭介が訪れたことがあっても不思議じゃない。

だけど今わたしといるということは、その恋は報われなかったということで…。