優しいカレの切ない隠し事



「これが…、子宝祈願なんだ」

ドキドキしながら説明文を読むと、その石に触ることで御利益が得られると書いてある。

「へぇ。うっかり触れないなぁ」

石と説明文を写真に撮り、その場を離れた。

いつかこの初姫神社に、プライベートで来れますように。

その願いだけは、心に祈って…。

「あれ?圭介ってば、どこに行ったんだろう」

気が付いたら姿がない。

同じ場所を写さないようにしなければいけないから、どこを写したか聞かないと。

見回した限りでは、どこにも見えなかった。

「もう、ちゃんと言ってから消えて欲しいよね」

小さな砂利を踏みながら、神社の裏へまわると、圭介の姿が見えたのだった。

そこにはたくさんの絵馬が掛けられている。

その絵馬の前で、圭介は呆然と立っているのだ。

どれか特定の物を見ているというよりは、絵馬全体を眺めている。

声をかけるタイミングを逃してしまい、わたしは少し後ろから圭介の様子を眺めるだけ。

もしかして、ここに何か思い出でもあるのかな…?

そう思ってしまうほど、圭介の横顔はどこか切なそうで、それでもどこか愛おしそうだった。