すると、聖也は大きなため息をついた。

「そういう言い方、誤解を与えるからやめろよ。サッパリと嫌われる方がマシ」

「ご、ごめん…」

聖也の言葉に、恥ずかしくも情けなくもなる。

わたしの気持ちが、結局は自分の為だったことに、気付かされた思いだ。

「もういいよ。実はオレ、結局見合い相手と結婚しないといけなくなってさ」

「えっ!?結婚!?」

「そうだよ。ここは事業拡大の為と割り切って、おとなしく結婚する。だから陽菜は、課長と幸せになれ。ただし、オレは協力はしない」

まさか、本当に聖也が結婚するとは思わなかった。

だけど、それで良かったのかもしれない。

動揺する心を抑えて、頭を下げる。

わたしから、最後の言葉を贈る為に。

「ありがとうございました。次からは、わたはもう来ない。きっと、聖也と会うこともないから。お元気で」

「おお、さよなら」

短い挨拶をした聖也は、最後にわたしの頭を軽く叩き、部屋を出て行った。