「何にって、聖也のことよ。あんなの逆恨みに決まってる」

思い出すだけでムカムカしてしまう。

好きだった人を、嫌いになんてなりたくないのに。

だから、こんな嫌がらせなんてして欲しくなかった。

「聖也さんがそこまでするってことは、陽菜のことを諦めきれてないんだろうな」

「それは…」

それを言われると、何て答えればいいのか分からない。

「何でだろうな?聖也さんが、陽菜にそこまで執着する理由は。二人が別れた理由は分かったし、それは辛かっただろうと思う。だけど、なんでここまで…」

圭介は腑に落ちない顔で、わたしを見ていた。

この顔は、何かを疑ってる。

それは分かるけど、キスを話す勇気はない。

話をそらさなきゃ。

咄嗟に思いついたことは、栞里さんの話だった。

「ねえ、圭介。栞里さんて、涼太さんと別れたいって思ってるみたいなの。知ってた?」