「あっ、陽菜ちゃん。何かあったの?さっき、涼太と課長が会議室に入っていったけど」
涼太さんのアポなし訪問に、オフィス内はざわついている。
そんな中で、栞里さんが声をかけてきた。
「それが、栞里さん…」
腕を引っ張り、周りに聞こえない場所でそっと説明をする。
聖也の話をし終えた後に、栞里さんは目を丸くした。
「そんな露骨なやり方ってある?課長だけじゃなくて、陽菜ちゃんまで降ろすなんて、それが愛情?」
興奮した栞里さんは、我に返ったように手で口を覆った。
「ごめんね。つい、熱くなって」
「いえ。身から出たサビですから」
小さくなるしかないわたしに、栞里さんは二人が入って行った会議室を見つめ、ため息をついたのだった。
「それにしても、どうなるんだろう。涼太が来たってことは、だいぶ話がややこしくなると思うのよね」

