一刻も早く、あんな条件は飲めないと言いたいけれど、聖也も忙しい身で、なかなかアポが取れない。
わたしを忘れられないと言いながらも、プライベートな連絡が全然なかったのは、結局聖也は忙しいから。
そう考えたら、もしやり直すという選択肢があったとしても、わたしたちはうまくいかなかったかも。
だって、今のわたしには…。
「陽菜、今度は何を考えてるんだよ。初姫神社の担当をしたいって」
いつだって会える場所に、好きな人がいるから。
「別に、何も。それより圭介って、給湯室の出没率高いね」
洗い物をしながら笑いを向けると、圭介は罰悪そうに苦笑いをした。
「息抜きだよ」
「へえ」
ほら、こんな風に仕事中でもふと会えて、話しが出来るんだから。
会いたいのに会えない。
そんな恋愛は、もうわたしには出来ないかもしれない。
「今朝から、陽菜の様子が変だよな?絶対、何か考えてると思うんだけど」
圭介が意地悪く言いながら近付いて来た時、
「仲がいいんだな」
と、涼太さんの声が聞こえたのだった。

