「我ながらいい出来じゃん」
ほぼ完成した次号の花井旅館の原稿を読み返し、自己満足に浸る。
この取材をした夜に、聖也にキスをされたのかと思うと、罪悪感も思い出させる記事だけど、一つ一つの積み重ねが圭介の評価に繋がる。
そう思うと、気合いも入るというものだ。
「見て、陽菜ちゃん」
デスクで原稿を眺めていると、栞里さんが封筒の束を持ってきた。
可愛い便箋タイプがほとんどで、中にはハガキも混ざっている。
「これ、何ですか?」
「初姫神社の反響の手紙。ご利益がありました〜みたいな手紙なの」
「凄いじゃないですか!?さすが栞里さん」
どおりで可愛い便箋が多いと思った。
パラパラと見た限り、ハートやピンクの柄のものが多く、見ていてこっちもニヤけてきそう。
「わたしのお陰じゃないわよ。ここは本当にいい場所でね。最近じゃ、パワースポット的な場所として、外国人観光客にも人気があるみたい」
え?
外国人…?
それは、聞き捨てならない言葉じゃない。

