「うん。そう。わたしと付き合ってた頃の圭介は、とにかく仕事ばかりでね。わたしたちが付き合ってることは隠したい、そう言われたの」
「隠したい?何でですか?」
わたしと付き合う時は、圭介はどちらかというと急ぐように、みんなに公表してたのに。
「だって、まだ課長にもなってなかったし、野心いっぱいの圭介は、社内恋愛がマイナスイメージになるのを嫌がったのよ」
「そうだったんですか…。だから、みんな知らないんだ。でも、圭介にとっては、リスクがあっても栞里さんと付き合いたかったんですよね?」
「そうだったならいいけど。そうそう陽菜ちゃん、圭介からの同棲の提案、断ったんだって?」
「えっ!?」
やっぱり栞里さんに話してたのね。
口を尖らせるわたしに、栞里さんは楽しそうに笑った。
「羨ましいな。わたしには、言ってくれなかったんだよ、同棲しようなんて」
「本当ですか!?」
「うん。家に帰っても仕事しか頭になかった圭介は、わたしとの生活は重荷だったのね」

