優しいカレの切ない隠し事



栞里さんとは、その日のランチを一緒に過ごすことにした。

お昼が一緒になることは、なかなかないことで、それだけ今日は『話をする日』になっていたのかもしれない。

会社近くのイタリアンの店に行くと、早々に栞里さんが口を開いた。

「陽菜ちゃんには今さらだろうから、普段通りの呼び方で呼ばさせてもらうね」

何のことを言っているのだろう。

頭に?マークが浮かんだ時、

「圭介から、ちゃんと聞いたのかな?」

と言われ、納得した。

きっと栞里さんの中では、『課長』より、『圭介』の方がしっくりくるに違いない。

わたしには違和感が残るけど、栞里さんが発する『圭介』は、本当に自然だった。