「圭介…」
あの時、同棲を断った時、ちゃんと理由を言えば良かった。
そうすれば、こんなことにはならなかったのに…。
圭介の背中に手を回し、しばらく顔を埋めた。
「もう、気にしないから。栞里さんとのことは信じる。それにね、栞里さんも気付いてたみたいで、わたしに言い訳したいって言ってたよ」
「ああ、陽菜の様子が変だって話をしててさ。でも、まさかキスを見られてるとは思わなかった」
どうしよう…。
圭介は、栞里さんとのキスをすごく気にしてるけど、それはわたしだって同じなのに。
「なあ、陽菜。聖也さんとはどうなった?オレは、お前と別れたくなんかない。許してくれるなら、どんなことだってする」
「許すだなんて…」
この瞬間、思ってしまった。
聖也とのことを知られたら、嫌われてしまうと…。
それだけじゃない、傷つけてしまう。
過去のトラウマを思い出させるくらいなら、わたしも隠してしまおうと思ってしまったのだ。

