「悪いのはオレなんだ。あの頃は、将来の海外勤務に向けて、出世欲丸出しだったから。栞里に淋しい思いをさせてたし、そこを涼太につけこまれたんだよ」
「そんな…。ヒドイ」
「自業自得だよな。元々、涼太とはライバル関係だったし、付け込まれたんだよ」
圭介に、そんな過去があったなんて想像もしてなかった。
「だから、陽菜に聖也さんの影が見えた時に、あの頃がフラッシュバックしてきてさ。嫌な想像ばかりして、勝手に疲れてた」
圭介は、わたしを力強く抱きしめたまま、そう言った。
「陽菜、同棲を断ったろ?オレ、あの時に何でだろうって考えたら、陽菜と聖也さんが栞里と涼太に重なってさ」
「そんな…!」
否定しようとしたわたしは、聖也とのキスを思い出した。
きっかけは不可抗力だったとはいえ、受け入れてしまったのだから。
そんなこと、絶対に言えない。
「栞里とキスをしたのは、ただ寂しさを埋めるだけだった。どこへぶつけていいか分からないイライラを、栞里にぶつけてたんだ」
「じゃあ、栞里さんも傷ついたんじゃない?」
「そうかもしれないな。だけど栞里も、涼太とうまくいってなくて、キスを拒まなかった。だけどその後、栞里に言われたよ。寂しさを埋めるキスしか、オレたちには出来なくなったんだなって」

