「ご、ごめん…」
慌ててスマホを確認すると、タイミングがいいのか悪いのか、かけてきた相手は圭介だった。
「誰?」
聖也は、あきらかにムッとした顔をしている。
話を中断されたのが気に入らなかったらしい。
「松山課長なの。何だろう…」
今夜は聖也の接待だと分かっているはずなのに、どうして電話をかけてきたんだろう。
不審に思いながらも電話に出ようとした時、聖也にそれを切られたのだった。
「せ、聖也。何をするの?」
「取り込み中でしたって言い訳すればいいだろ?今は、オレとの時間だ」
わたしを見つめる真剣な眼差しに、ドキッとする。
「オレとの時間って…。今はプライベートじゃないでしょ?課長にかけ直さなきゃ」
もう一度スマホを取ったわたしの手を、聖也は力強く握ったのだった。
「こうでもしなきゃ、陽菜はオレと二人きりにはなってくれないだろ?いい加減分かれよ。マジでお前に会いたかったんだ」

