離れといえど、一般的な家の大きさはある。
その家の一階の居間で、わたしはまさにヘビに睨まれたカエル状態だ。
壁に掛かったクリーム色の着物が見えるけど、あれはきっとわたしが着る着物だろう。
さっさと着せてくれたらいいのに。
「ねえ、あの着物なんでしょ?早く着せてよ」
話をすり替える目的で言ったのに、それは見透かされたようで、聖也に睨まれてしまった。
「隠そうとしてるな。やっぱり母さんが原因か」
「そ、そんなことは言ってないじゃない。何でそう思うのよ」
「だってオレ、お見合いの話を勧められてるから。それも突然な。まるで母さんは、オレと陽菜を引き離したいみたいだ」
「え?」
お見合い…?
聖也が結婚しちゃうってこと?
「とっくに別れた、それもオレはフラれてるんだし、母さんが心配することは何も無いはずなんだよなぁ。何で急に焦ったんだろうな?」
聖也は、わたしから真実を聞き出したいみたいだ。
だけど、それを言っちゃったら…?
息を飲み聖也を見つめていると、会社の携帯が鳴り始めたのだった。

