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*日向side*





「──うっ」



ズキン、割れるような頭の痛みに私は目を覚ました。



なに、ここ…?



目を開けたところで見えたのは、薄気味悪い倉庫の壁。

それと、ガラの悪い人たちが数人。



私は冷たいコンクリートに横たわっていた上半身を起こした。





「やーっとお目覚めかプリンセス?」



私の顔を前からのぞきこんできた男は口を開く。



「誰、あんた」




気持ち悪い。


ニタニタ笑う目は据わっていて、どこか狂気を感じる。




…なんなの、ここ。




縛られた足と手を見て、自分が拉致されたんだと理解した。


でも、なんで?

なんのために?


私を誘拐したって良い事なんか一つも──





──まさか。





「俺らは凶虎。お前を利用させてもらうぜ?───青嵐を潰すために」



あぁ、やっぱりだ。



こいつらは知らないんだ、私がもう青嵐の姫じゃないこと。




「悪いけど、いつまで待っても青嵐はこない」


「は?ふざけんなよ」


「ふざけてない、いたって真面目だけど」


「どこがだよ、つかその態度がムカつくんだよ!!!下っ端ひとりやったのも可愛い顔してるから許してやろうとしてんのによ!」




バシン!!


頬にすごい衝撃がはしって、私の上半身は後ろに倒れた。



頭がコンクリートの床にぶつかりそうになるけど、なんとか衝撃を背中で食い止める。



「っ…」


痛みでもれそうになった声を、何とか堪えた。




口の中には鉄の味がじわりじわり、広がっていく。




強く保っていた気持ちが、少し恐怖に傾いた。


震えそうになる手を握り合わせて、キッと睨む。






「────だって私はもう姫じゃないんだから、だれも助けにこないに決まってるでしょ!!!」