とか思いつつも内心焦っていた。
だって凶虎は、最近隣町で勢力を上げているヤベェヤツらの集まり。
『お前らの姫は、預かった』
中哉の顔が強張る。
俺らの空気も、張り詰めた。
『取り返したいなら、隣町の7番倉庫までこい。時間厳守、でな?』
プツ、と切れた電話。
早く行かないと姫が危ないというのは、みなまで言わなくても分かった。
「っ、とりあえず、今いるヤツら全員連れて乗り込むぞ!!」
「え、でもそれじゃあ数が足りなくねぇか!?」
「まだ来てねぇ奴らと、同盟くんでるとこに声かけろ!」
「待てよお前ら。焦るのは分かる、けど一旦落ち着け。計画は慎重に、だろー?」
相手はあの凶虎。
いつかは潰さなきゃいけなかったけど、銃やナイフを持ち出してくるヤツらに無計画で立ち向かうのは危ねぇ。
「でも、早くしなきゃゆーちゃんが!」
焦る歩と、自分に言い聞かせるように口を開いた。
落ち着いてるように見せかけて、本当は俺だって相当焦ってる。
「でもじゃねえ。無計画で行っても柚姫も取り返せないで終わるだけだろ?そんなことになったら──
「みんなおはよー!…え、どーしたの?」
………いるじゃねーか」
「え、じゃあ凶虎の言ってたことは」
"ウソ" 一瞬頭に浮かんだその言葉の後、俺らは気づいてしまった。
「ねぇ、どーしたの?」
─────日向だ。
でもその言葉を、柚姫の前で言うのはダメだ。
「なんでもねーよ?なぁ?」
「あ、あぁ」
「ふーん?あ、あたしちょっと下っ端君達と話してくる!」
そう言って丁度良く出ていった柚姫に安堵しながら、俺は口を開いた。
助けに、いくのかよ?
「どーすんのよ、総長さん」
中哉を見て、聞けば。
「…俺は、いかねぇ」
キッパリ、そう言われた。
その言葉に、迷いの色があった皆の表情が変わった。
「…だよな、だってあいつは裏切り者だ」
「傷つけばいいんだよ、ゆーちゃんと同じ目に合えばいい」
「それに、助けにいったら下にも示しがつかねぇ」
全員の意見が一致した後、俺たちの張り詰めた空気はふ、と緩んで。
今のことを記憶から消すみたいに、いつも通り好き勝手に過ごし始めた。
──これで、俺たちの意見は一致した。
でも、俺たちは見捨てるんじゃねえよな?
これが“正解”──そうだろ?
*青嵐.茂side end*



