真実と嘘〜Truth or Falsity…*〜【上】




「心配しないで。そのせいで日向の様子がおかしかったんじゃない。その時に、幹部のあのチャラそうなやつが何か思い出したように言った『──でもお前は海には』って言葉に日向は過剰に反応してた」



黙ってって、切羽詰まった声で。


そう言っても、皆はあたしがなんで日向が海が苦手って判断したのかわからなかったようで「?」という顔を向けてきた。


あ、説明不足。



「その青嵐に会う直前に、女子の水着と男子の水着のコーナーを分けるために置いてあった板をみて日向の様子がおかしくなった。その板ね、一面に大きく──海の写真が貼ってあった」



「ぇ、」



お兄ちゃんが、ほんの少しの声を漏らす。


みんなの表情も、もう「?」という顔じゃなくなっていた。



「日向、その写真を見たとき指が少し震えてて。いっつもあんなにキラキラした目してるのに、少し見開かれた目の中の瞳が真っ黒で。塗りつぶされたみたいに真っ黒で。どこも見てないみたいだった」



その時のことを思い出して、あたしの声が少し震えて早口になってく。





「き、えそうだった、そこに日向は居るはずなのに、居なくって。触れるはずなのに、通り抜けちゃいそうで。日向の呼吸がだんだん荒くなっていっちゃってあたし怖くって、あんな日向、見たことなくて、日向が死んじゃったらどうしようって思っ──」




いつも明るい日向のその様子は、私には怖すぎて耐えられなかった。


思い出して話すだけなのに、そのときのどうしようもない不安が胸を蝕んで、泣きそうになった私は気付いたらふわりと誰かに包まれていた。



大きい頑丈な胸板。



ぽんぽん、あやすように背中に優しい振動が伝わった。




「わかった、わかったよ。伽耶ちゃん日向ちゃんがそんな状態のとき1人にさせてごめんな、辛かったろ?もう、大丈夫だから」