あの時の感覚が、忘れられない。
だからまだちょっと、怖くて。
まだ、もう少し経たないと、話せない。
──でもいつか、話すから。
いつか絶対に話すから、ごめん。
まだ私は────弱くて、脆いんだ。
みんなと同じ強い瞳に、眩しいくらいの強い瞳に、私はなれる日が来るのかな。
ううん、違う。
どれだけかかっても、なってみせる。
そっと、心の中でそう呟いて、私はクッションに埋めていた顔を上げた。
いつも通りの私の部屋。
家具も、家賃も、何もかもおばさんが用意してくれたもの。
おばさんは“あのこと”があった後、私を経済的な面で助けてくれている。
おばさんとおじさんの家がお金持ちなことに感謝しても仕切れない。
といっても、“あのこと”以来、おばさんの家に一回行ったっきり会ってないんだけど。
どうしても保護者がこなくちゃいけない行事とかはおじさんが来てたし。
目に入っためったに鳴ることのない固定電話を眺めて、今年のお盆も、『家には顔を見せにこなくっていいから』ってゆーおばさんからの電話がかかってきたりするのかな、なんて考えた。
…まぁ、別に行く気もさらさらないけどね。
そんなことを考えながら、「よしっ」と呟いて私は立ち上がった。
おばさんから毎月送られてくる、7万のお金。
マンションの家賃はおばさんが払ってくれてるから、食費、水道料金、光熱費に使えってことなんだろうけど……流石に余る。
その余ったお金で買ったノートパソコンを立ち上げて、検索するところには【海 画像】と打ち込んだ。
出てきた画像に、心臓の鼓動が不規則になった。
慣れなきゃ、普通に見れるようにしなきゃ。
あと、今日から、シャワーだけはやめて、湯船にお湯溜めてちゃんと浸かろう。
そんなことを考えて、私はフラッシュバックしそうになる脳内をなんとか制御しながら、そこに出てきた画像を一枚一枚見ていった。