「なにお前百面相してんだ」
茜は私の頭から手を離して立ち上がりながら、意地悪に笑って言った。
もういつも通りに戻ってるし。
「べっつに、百面相なんかしてないしーっだ」
調子狂うなぁ。なんて思いながらぷいっと顔をそらした。
立ち上がった茜は、まだ続いていたまーくんとミッキーの喧嘩をみて「んだあれ?」首を傾げて私に聞いてきた。
「おい、あいつら、俺のほうが日向を…とかなんとか言ってるけど、なにしてんだ?」
「や、な、なんか。………ミッキーが私のこと好きになったとか言いはじめて」
口ごもりながらもそう言うと、ピッシャーンと効果音がつきそうなくらい衝撃的だという顔をされた。
茜の大好きな学校の近くのパン屋さんのパンを、私が食べたことがないと言ったときよりもすごかった。
でも、わからなくもない。
ミッキーが突然私のことを好きになるとか、どういう状況だって感じだ。
それに。
私がまだ、青嵐の姫だったときに篠原柚姫に言われた言葉が頭を横切った。
『──誰もあんたを
好きにならないって──』
私は、青嵐にいた時、恋愛対象じゃなかった。
「仲間」だったのか。
もう、今じゃよくわからないけど。
でも、言えることは一つ。
私は「女」として見られてなかった。
しいて言うなら、「女友達」。
────なのになんで、今は2人から好かれてるんだろう。
わからない。
なにが違うんだろう。



