相変わらず、人の心の中を見透かすのが上手だ。
そんなことを考えながら龍騎さんを見ていると、龍騎さんは表情を緩めて、
「なにがあったか知らねーけど、泣くなりわめくなり好きにしていいぞ」
そう言って、ほかのお客のところに歩いていってしまう。
──グイッ
龍騎さんが、3、4歩あるいたところで、とっさに龍騎さんの袖をつかんで引き止めた。
手が、少し震える。
それを隠すようにして、私は握る手に力を込めた。
床を見つめたまま、口を開く。
「…龍騎さんは私の、「…お前の味方だ」
…まだなんにもいってないよ」
なにがあったか知らない、なんて言ってるくせに私の欲しい言葉をくれる。
わたしの過去を知らないはずなのに、まるで知ってるみたいに、全てお見通しとでも言うように、私のことをすぐに分かってくれる。
「…ふふっ」
やっぱり、この空間もこの人も落ち着く、好きだ。
フラッシュバックによってぐちゃぐちゃにされた頭のなかがやっと落ち着いた気がした。



