咲の口からでる、“ミキ”の呼び名は。
俺の愛称だったのに、いつの間にか俺というブランド名へと変わってしまってた。
なんかもう、笑えてきた。
嬉しそうに話して自慢する咲をみて、おれは口から渇いた笑い声をもらした。
『ふっ、はは』
どうせなら、この場で。
別れてやろう。
『なぁ、咲』
『ん?なーにミキくん』
くるり、笑顔で振り向いた咲に俺も笑顔で笑い返した。
『────別れよっか』
咲の笑顔が、固まる。
そんな咲をおいて、自転車まで歩いていくと乗ろうとしたときに後ろから抱きつかれた。
『まって!ミキくんまって!?なんで?考え直して──』
なんでって、なんだよ?
ムカつく気持ちを隠しながら、振り向いて笑顔で続ける。
『悪いけど、もう咲とは付き合えねぇんだ』
『な、なんで!?』
必死のその形相は、まるで自分の地位が落ちるのを恐れているみたいだった。
なんでってなんだよ。
なんでってなんなんだよ。
──んなの咲が1番わかってんだろ…?
『俺をアクセサリーとしか思ってないやつと、付き合い続けられるワケ、ねぇだろ…!!』
抑えきれなくなった怒りを滲ませながら、少し大きい声でそう言うと咲は肩をビクリと揺らした。
『っ、あ…』
口元に手を当ててそう呟いた咲は、自分が俺をどう思っていたかに気付いたようだった。
固まったまま、悲しそうに戸惑う咲をみて、なんでか痛くなる心臓。
そんなのを振り払うように、ガシャン!!思いっきり自転車に乗って走り出した。
──もう、嫌だ。
──何もかも、壊れてしまえばいい。
──おれは、俺は。
──なんのために生きている…?
たどり着いたのは、治安の悪い裏の道。
売られた喧嘩を買って、殴って殴られて殴られて。
俺は裏の世界の住人になった。



