またか…、うんざりしながら俺はその電話を無視する。
最近咲からかかってくる電話は、こう。
『友達と遊んでるんだけど、迎えにきてくれない?』
なにが目的か、わかっている。…わかってるんだ。
でもまだ、咲の口から俺が子役だったときのことを自慢するような言葉は出てないから、だから、咲の彼氏というポジションにすがりついていた。
そこから、落ちたくなかった。
また俺は、希望もなにもない、ただ時間の流れに合わせて進むだけの人生に戻るのかと思ったら、正直怖かった。
──でももうそろそろ、潮時。
もう一度かかってきた電話に、仕方なく俺はでた。
『なに、咲』
『暗くなっちゃったから、ミキくんの家の近くのカラオケまで迎えにきて??あと、顔出してきてくれないかな?』
『………わかった』
自転車をそこまで、ノロノロ漕ぐ。
──もう嫌なんだ。
もう咲と、付き合ってられない。
咲と別れるのは、怖えよ。
でも、このまま付き合って、もしまた昔と同じように目の前で『こいつは私のアクセサリー』と証明するような言葉を吐かれたら。
そっちの方が、怖えんだ。
咲を変えてしまったのは、俺なのかな…?
もう、前みたいには戻れねぇのかよ…っ!
締め付けられた心臓に、目の奥が熱くなった。
気を緩めたら、今にも景色が歪んでしまいそうでなんとか堪えてカラオケまでたどり着いた。
店の前で待っていた、咲は笑顔で近づいてきて、咲の後ろにいた数人の女子はキャアと騒ぐ声が聞こえる。
『ミキくん、ありがとう!』
ふわり、向けられた笑顔に別れようと決めた決心が揺らぎそうになった。



