──カランカラン
「いらっしゃい」
それがここ、BAR “JOKER” 。
「龍騎(リュウキ)さん、久しぶり」
ちなみにカフェの名前は “ACE”。
つまり、店が中間で壁とスタッフルームや食料庫、キッチンによってわけられていて、繁華街側はカフェ、小道側はバーになってる感じ。
カフェにいる人にはバーは見えないから、バーの存在に気づく人は裏に繋がっている人以外では少ない。
店の名前は凄いトランプって感じの名前だけど。
私は結構気に入ってる。
落ち着いた雰囲気のお店によく似合う、オーナーの彼が吉田 龍騎さん。
切れ長の目に、短い黒い髪をかっこよく分けて大人の色気を倍増させてるイケメン。
龍騎さんがいる近くまで歩いて行き、椅子に座った。
「龍騎さん、メロンソーダとパエリア頂戴」
「了解。てゆーかほんといつぶりだ?」
私をみて嬉しそうに目を細めて笑った後、ちょっと間を開けて困ったように眉をハの字にした。
「…また、嫌な夢でもみるようになったか?」
やっぱり、龍騎さんは鋭い。
今日みたいな夢をみて、眠れなかった高1の最初の頃。
いっつもここに通っていた。
最初は話しかけてくる龍騎さんも無視して、1人でゆっくりしてたんだけど。
夢をみて泣いちゃったときに、そのあとバーに行ったら私の赤い目をみて、『泣いたのか?』って心配そうに声かけてきて。
無視したのに、頭をぽんぽんって叩いて『何があったのかは聞かねぇけど、嫌なことあったらとりあえず泣いとけ』って言われて。
なんでか1人でボロボロ大泣きしてしまったんだ。



