台本をもらって、必死で覚えて。
いろんな人の演技を、母さんに見せてもらった。
なにもかも手探り状態で、撮影に挑んだ。
俺は素人だし、何度も撮り直しする覚悟だった。
絶対他の人たちにも迷惑かけちゃうだろうなぁって。
なのに、そのドラマが撮り終わるまで俺が原因で撮り直しをしたのは10回にも満たなかった。
監督には、
『はじめてでこの演技か!すごいなぁ』
なんて褒められて。
他の俳優さんにも褒められて。
ドラマもヒットを果たして。
新人の子役として、一躍有名になった。
CMのオファー。
ドラマや映画のオーディション、依頼。
バラエティー。
めまぐるしく回る俺の日常。
母さんは仕事を一つにした。
前よりも笑顔が増えた。
“母さんのため”
そうおもってはじめたこの仕事を俺は大好きになっていた。
全部全部、全部が上手くいってた。
驚くくらい。



