真実と嘘〜Truth or Falsity…*〜【上】



──でも、思った以上にその世界は厳しかった。


入る時にお金はかかるし。

レッスンにもお金がかかる。




母さんの負担を増やしたのは、俺だった。


でも絶対に売れて、楽をさせてやるって決めて本気で取り組んだ。

素人だった俺は、演技、歌、ダンス、ポージング、いろんなレッスンをした。


最初の話では一年はレッスンをするハズだったんだ。


なのに、オーディションもなくなぜか一つ目の役が決まった。




『大丈夫なの、幹夫?』


家でご飯を食べている時に、母さんにそう聞かれた。


明日は、初めての顔合わせ。


緊張して、うるさく暴れ狂う心臓を隠すように口に笑みを浮かべる。


『へーきだって』



主演女優さんの、息子役。



なんで俺にこんなデカイ役が…。



不安で震えそうな俺とは裏腹に、刻一刻と時間は過ぎていく。



そして、顔合わせの時になった。



『あら、可愛い!この子が私の息子役?初めて見る顔ねー』



テレビで見るより、すごい迫力。


清楚な服を着ていたテレビの時とは違って、ド派手な服に身を包んだ女優。


『よ、よろしくお願いしますっ』



震える声で挨拶をする俺を、品定めするように見る共演者の人たち。



怖い、なんて気持ちが横切ったけど。



母さんのためだ、と振り切った。