いつもより、軽い足取り。


こんなに嬉しいのは、こんなに明日が楽しみなのはいつ振りだろう。

夕焼けに染まっている道を歩きながら、鼻歌を歌ってしまいたくなるくらい。



──あの後。


茜とはだいぶ仲良くなった。



自分の教室までカバンを取りにいき、空き教室────旧美術室に戻ってきてからは放課後までずっと茜と一緒にいた。



茜が持ってた、PSPやったり。


私のカバンの中のお菓子食べ漁ったり。


一緒に漫画を読んだり。



そして、喧嘩を教えてもらえる事にもなった。


青嵐の幹部が言ってた、『痛い目にあわせる』みたいなこと。


それがもし本当だとしたら、私はだいぶ危ない。

2週間たった今でも、中哉に蹴られた痣は消えてないのに。




…と、まぁそんなわけで、喧嘩を教えてと茜に頼んだら理由も聞かずすんなりオッケーしてくれた。



茜、たぶん喧嘩相当できると思うし。





それに──…って!!!


そこまで考えてハッと我に返った。


気付いたら上がってた頬に慌てて手を当てて、グイッと思いっきり下に下げる。



何思い出してニヤニヤしてるんだろう、私は。


友達でも、ないくせに。



"友達になって"………そう、言えたら良かったのに。





話し相手じゃなくて、友達という関係になってしまったら、軽蔑されたときの辛さが大きくなるような気がしたから。


そんなのきっと、結局のところ辛いものは辛い、変わらないのに。


話し相手なんて言ってしまった私は、相当の臆病者だ。




「あー、ほんっと…弱い」



何もかも。