──あぁ、わたしはいつの間にこんなに弱くなっちゃったんだろう。
「お前の“そのこと”が、何なのかは知らないけど。暇つぶし程度になら話し相手になってやるよ」
「……ほんとに?」
「ほんとだっつの、わざわざ嘘言う訳ねぇだろ。───あ、それと、しょうがねぇから一応聞いといてやるよ。“そのこと”は、本当のことか?信じていいのか?それとも信じねぇ方がいい、嘘か?」
ニヤリと笑った藤代茜は、私が何て言うかなんて分かっているんだろう。
意地悪そうで、優しさを含んだその笑顔に、胸にじわりと何かが広がる。
…そういう風にされると、嫌でも期待しそうになるじゃんか。
信用しそうに、なるじゃんか。
ダメだって、分かっているのに。
まるで、今まで誰にも信じてもらえなかった分全部を込めるみたいな声が、無意識に出た。
「……嘘だよ、全部。全部」
「それだけ知れてれば、別にいい。あ、名前は」
「花崎、日向」
「ぶっ、日向って、お前も大概女子らしすぎるっつー名前じゃあねーな」
ケラケラわらう、藤代茜。
信用、してないよ。
わたしの噂を耳にして、私を軽蔑した目で見てくる時が来たって傷ついたりしない。
なんて。
──嘘だ。
ホントは信用してしまいそうで。
軽蔑されたらきっと傷ついてしまう。
そんなこと分かってるのに。
話し相手だなんて無理やりこじつけてでも、誰かと関わりがほしくて独りでは生きていけない私は、ものすごく───弱いんだ。
「よろしく、藤代茜」
「茜でいいから」
「わかった。あ、アドレス頂戴。学校に来る日はメール送って、この教室来るから」
「アドレスやるけど、俺が暇つぶしに毎日学校きてやってもいいよ」
「え!?なんで!?」
「用事あるときはこれねぇけど、ない日は家で寝てるだけだし。寝てるよりはおめぇとしゃべってたほうが暇つぶしになんだろ」
「どうせ、くるって言っても午後くらいからでしょ?まぁ来たらメール頂戴よ、授業サボって行くから」
「むしろ俺からメールきてからすぐこなかったらなんかおごれよ」
「なにそれ、理不尽!!」
でも、もう一度。
──傷つくと分かっていながら人と関わってしまった私は、愚か者なのかな……?