「───ヒッ!!」
もともと悪い目つきをさらに悪くして睨んでくる藤代茜に、蛇に睨まれたカエル状態の私。
こ、こわすぎる。
「次名前のことに触れたら、ただじゃすまさねぇかんな」
「りょ、了解であります」
ビビリながら返事をすると、睨むのをやめてくれた藤代茜にほっと一息つく。
今まで名前のこといじられてきたんだろうな。
そんな事を考えてから私はある事に気づいて、目を見開いた。
「て、てゆーか、ふ、ふ、ふ、」
「あ?んだよ」
「藤代茜って!ウチのクラスの不登校の子じゃん!」
「不登校じゃねっつの。ときどき学校には来てんだよ、まぁいっつもここにいるけど」
「…あー、だからあのことも知らないわけか」
ボソっと呟いて安堵する。
きっとあのウワサをしっていたら私には話しかけなかったと思うから。
気づいたらこんなに話していたけど。
噂の中の私を知らない人と話すのは久々で、楽しいってちょっと思ってしまった。
だって向けられる視線が嫌悪とか、軽蔑するような目線じゃないのなんて久しぶりで居心地がよくて。
息が詰まりそうだったこの学校での生活のなかでやっと息ができたような感じがしてしまう。
「は?あのことってなんだよ?」
「……いつか知ることになるよ」
できるならば、知られたくないけど。
…って、何考えてるんだ私は。
でも、だってせっかく噂の私を知らない人に出会えたんだから。
わたしをなんのフィルターもかけないで見てくれる人に出会えたんだから。
知られたくないと、思ってしまう。
でもきっと、もしかしたら明日にでも、知ってしまうだろう。
「いつかっていつだよ」
「いつかは、いつかだよ」
「で、それを知ってたらなんなワケ?」
「きっと、私のこと軽蔑する。知ってたらさっきもきっと話しかけない」
「…ふーん」



