わからなかった。
さっきまで、泣いていたのに。
俺らと目もあわせられないくらい、怯えていたのに。
白龍の幹部、藤代がきたことによって安心したように肩を揺らして泣いていた。
嗚咽をもらして、すがるようにそいつの手を握りしめて。
そんなひーちゃん、俺は知らない。
俺が知ってるのは、楽しそうに笑う彼女と。裏でゆーちゃんをいじめてた最低な彼女だけ。
俺らの前で、あんなに安心した雰囲気になったことはあったかな?
白龍とひーちゃんは、元から手を組んでたのかな?
俺らを陥れるために?
ひーちゃんはいつから白龍の仲間だったの?
──ひーちゃんが、わからない。
優しくふわふわ笑うひーちゃん。
ゆーちゃんをいじめたひーちゃん。
白龍の仲間のひーちゃん。
全部ひーちゃんだけど。
どれが本当のひーちゃんなのかがわからない。
俺らの横を通りすぎる時にした香りと、「うん!」という嬉しそうな声は、ものすごく懐かしく感じた。