周りにいた、野次馬の人たちが息を飲む声と。
女子の小さな悲鳴が聞こえた。
この行動で、伝わったはず。
「私、今、白龍の下っ端やってんの」
強がりでも、強く見せたくて。
不規則になる心臓を隠して。
目線を合わせるのは怖かったけど、グッと青嵐の幹部を睨みつけるように見て口元に笑みを浮かべた。
青嵐の下っ端の首元をパッと離すと、そいつはすぐに私から遠ざかった。
上出来、と言うように私の頭にポンと手を置いた茜は、裏庭──つまり、青嵐の方へ歩を進める。
静かになった野次馬たちの目線を感じながら、私も茜について歩いていく。
戸惑っている青嵐の目の前で喧嘩を売るように止まった茜は、ギラギラ目を光らせて青嵐の幹部を見てから後ろにいる野次馬を振り返って、再度口を開いた。
「こいつをいじめよーが、いじめまいが俺にはさらさら関係ねぇけど。いつまでも、大人しいと思ったら大間違いだって、覚えといた方が良いんじゃね?」
茜は威圧感をこめてそう言うと、青嵐の幹部の間を通って歩いていってしまう。
私も慌てて追いかけて、茜の袖を引っ張った。
「茜、私がいじめられてたの知ってたの…?」
「きっと白龍の奴ら、ほとんど知ってる。つか、気づかねぇ方がすげぇ。まぁ、今日文化祭が終わったら全部話して安心させてやれば」