でも、引いているけど、私には何処か優しさを含んだ呆れたような声に聞こえて、よけい私の口元は緩んでしまった。
傷だらけで、ボロボロだったはずの心が修復されてく。
いっつも怒ったりしない茜が、わたしのことで怒ってくれた…って言うのはちょっと自意識過剰かもしれないけど。
でも、茜の声が、表情が、言葉が、まるで特効薬みたいにわたしの心に染み込んでくる。
自分では気づかなかったけど、私は安心しきった顔になっていた。
緩んだ茜の手の隙間から見えた、中哉の瞳はなぜか知らないけど──揺れていた。
そしてそんな青嵐の幹部の後ろから、鋭く睨んでくるのは篠原柚姫。
へらりと崩れていた表情が、少し強張ってしまった。
そんな私に気づいたのか、茜は小声でよからぬ提案を持ち出した。
「なぁ、周りの奴らとあいつら──ちょっとびびらしてやろーぜ」
いたずらを仕掛ける前の子供のような顔で、ニヤリと笑った茜に嫌な予感しかしなかったけど。
私は濡れた目元を拭いて、「なにすんの?」ニヤリと笑い返した。
小さい声で話されたそれに。
うまくいくかな、なんて思いながらも私の口元は自然と上がっていた。



