周りにはいつの間にか集まっていた野次馬。
目の前には青嵐。
こんな敵だらけのところで、泣きたくなかった。
だけど私の目に溢れる涙は止まらない。
歪む、歪む。
景色も、色も、青嵐の顔も。
目の淵いっぱいいっぱいまでたまった涙がポタ…と流れる瞬間。
「ワリィけど、そこまで。──俺の仲間そんなに虐めないであげてくんね?」
大きい手のひらが、私の目の前に広がって。
目元を覆われて。
視界が遮られた。
そして、耳に響くのはいつもと変わらないトーンのあいつの声。
きっといつも通り、顔も意地悪く笑ってるんだろう。
私の両肩に両腕をダラリとのせて寄りかかるようにしながら、右手で私の目元を覆ったのは────
「ふっ、う、茜…!!」
──茜だった。
視界を遮る、茜の手をすがるように両手でつかむと。
溜まっていた何かが溢れ出すように、私の目からとめどなく涙がこぼれた。
止まらない。
張り詰めていたものが全部壊れて。
茜の手を握ってるだけで、安心する。



