真実と嘘〜Truth or Falsity…*〜【上】







「は、お前…どうした?」






話しかけてくる茂の言葉に返事をする余裕なんかない。




膝の力が抜けて、その場でうずくまる。



肺の辺りを握り締めて、もう片方の手でぎゅっと頭を押さえた。



──痛い、痛い。





青嵐の仲間になってからはこんなこともうなかったのにな。




駄目だ、青嵐に会ってから弱くなってるね、私。




全部が怖い。



皆がわたしを汚いって思ってる。


だからみんなは私を嫌うんでしょ?






「はぁ、ぅ、いや、ごめんなさ、」







頭の中が、過去の記憶で埋め尽くされる。


あの人の顔が、見える。

あの時の光景が全部全部、鮮明に思い浮かぶ。




『汚い』




沢山の口が動いてそう言う。



あの時みたいに、水の中にいるみたいに息ができない。




今はあの時とは違う。

わかってるけど、どうしてもあの時と重なってしまう。





いや、嫌だ。怖い──。





「なぁ、ほんとお前どーした…」





「っい、いや!!よらないでっ…!!」







──パンッ!!



伸ばされた茂の手に、なんでか首を絞められると思って。



私はとっさに茂の手を払った。



宙を彷徨う茂の手。



荒い息のまま、茂の驚いたような顔を見る。



そして、自分が今何をしてしまったのかに気づいた。




最低だ、私は。








……茂が、一瞬あの人に重なって見えた。



どうしようもなくなって、思いっきり立ち上がる。




「っ…!!」




そして逃げるように、私はその場を走り出した。





最低だ。



青嵐のみんなを最低だなんて言う資格がまるでない。




そりゃあ、彼らは十分最低だ。




けど。




仮にでも仲間だった人と、あの人を一瞬でも重ねてしまうなんて。









私が一番、最低だ。