そして、最悪な気分の私に追い打ちをかけるように先生が言う。
「じゃあ今日は、校門に装飾する物の準備お願いします!」
…あぁ、もう本当に今日はツイてない。
今日はなるべく簡単なのが良かったのに。
頭の中にダンボールの広がった教室を思い浮かべて、ガックリ肩を落とす。
今日はやっぱり倉庫いけないかな…なんてため息をつきながら、私は会議室からでた。
*
それから1時間。
校門の前を飾り付け終わり、やっと教室に戻れると思ったところで──同学年の女子2人に腕を掴まれた。
「そのペンキ洗って上げるから、こっちついておいで!」
ニヤニヤ笑いながら、下駄箱の近くのトイレに連れていかれる。
なにをされるのか分かってしまって、腕をぶんぶん振りほどいて逃げたけど後ろにいたもう1人の女子に背中を蹴られて。
転がりこむようにトイレに入ってしまった。
「いった…」
「何床に手ついてんの?汚いな」
「じゃあ洗ってあげるね」
いままではバケツだったのに。
その子は、水道についているホースをもって蛇口をひねった。
突然のことに対応できなくて、顔に勢い良く水がかかる。
「ゲホッ…!」
口の中に入って来た水は、変なところに入って苦しくなった。
息をしようとしても、水が邪魔で息ができない。
──まるで、あの時みたいだ。
──息ができなくて。
過去にとらわれ始めた頭の中。
どうすることもできなくて。
思い出してはいけないと、警告しているのに蘇ってくる。
ダメだ、ダメ、だめ。
「は、ゲホッ、はぁはぁ、はぁ」
頭の中が過去で埋め尽くされる寸前に、顔にかかってた水が止まって。
息ができるようになった私は我にかえり、なんとか過去から抜け出すことができた。
あぶな、かった。
こんな奴らの前で、弱さを見せてしまうところだった。
力が抜けそうな膝に、グッと力を入れて逃げるために一歩踏み出すと。



