一発、でもまぁ手加減はして。



「おまえ、うぜぇ」




パンチをお腹にめり込ませると、表情を歪めた日向は床にどさりと倒れこんだ。


別にそんなに強くやってねぇのに。


深くは考えず、そのまま通りすぎた俺は自分の怒りを少し収められたことにスッキリして。




──日向の気持ちにも。


──また、真実から遠ざかる一歩を踏み出したことにも。



なに一つ気づかなかった。



*夕side.end*