そして、私の膝の裏に腕を入れ、いわゆるお姫様抱っこで走りだした。
「おお!これ痛くない!ナイスだね南!」
「おっま…、そこは照れて降ろしてとか言うとこじゃねぇの?」
とかなんとか呆れられたけど、別に気にしない。
暁と南はなんとか、先生と距離を開けて旧美術室にすべりこんだ。
バン!!
すごい音を開けて開いた扉に、びっくりした茜の顔が見えた。
けど私たちはそれどころじゃなくて、急いで扉をしめて鍵をかけた。
ズルズルと、壁に背を預けて床にへたり込む。
「はぁぁぁ〜、逃げ切れた」
「ふー疲れたなー」
「暁、お前こっち走ってくんなよな!」
床に座り込んで、荒い息を整えながらギャーギャー言い合ってると正面から何かが近づいてきた。
「…お前ら、なにしてんだよ」
呆れたような声。
誰だろう、なんて考える必要もなく分かってる。
声の方へ顔を向ければ、案の定。
「茜!…は、はろー!」
引きつった笑顔を向けながら、片手を上げて挨拶すると茜は両方の口角を上げてにっこりと素敵な…不気味な笑顔でこっちを見てきた。
あは、やっぱり怒ってらっしゃる。
ヘラヘラ笑顔を返してみると、茜に頭をがっちり掴まれて低い低い海底のような声で「奢り、な?」と言われた。
「は、はひっ」
ビビってる私に、悪魔のような笑みを残して、南と暁に目を向けた。
「──で、なんでお前らもいるんだよ」



