青春を取り戻せ!

無給といっても、それでは生活できないので、室の教授から研究費という名目で月十万円位の手当ては貰っていた。

教授は老人性痴呆症の一つアルツハイマー病の治療薬を開発中で、僕はそれを手伝う傍ら、自分のテーマである老化のメカニズムの研究を続けていた。


その日はゴルフ練習場に来ていた。普段は滅多に来ないが、研究室対抗ゴルフ・コンペを近日中に控え、ここのところ三日間連続して通っていた。

黙々と打っていた僕の前をシャンクしたボールが通過した。

驚き、後ろを振り返った。

若い女性がいた。

彼女の美しさにも驚かされた。

彼女は濡れたように艶(つや)を放つ豊かな黒髪に透き通るような白い肌、輝く大きな瞳を持っていた。

まわりを霞(かす)ませるほど美しかった。

ベージュにブルーのモザイク模様の入ったニットセーターにブルーのキュロットというアクティブな格好だったが、絹のドレスのようにエレガントに見えた。

「ごめんなさい。お怪我はありませんでしたか?」

と、まるでエッチングされたように綺麗に揃った眉を下げ、理知的でしかも、天使がいたらこういう声を出すだろうと思えるような優しさ溢れる声で問いかけてきた。

「いいえ。当りませんでしたから」

「先ほどから拝見させていただいていますが、お上手ですね」

「そんなことはありませんよ。下手の横好きっていう奴です」