若い私服のほうが素早く、僕の両手に手錠を掛けた。

「何すんだ!このやろう!」

「警官侮辱罪も適用してやろうか?」

「バカにするからだ! 見えないわけないだろう」

「見えるか?加藤?…犬なんかいるか?」

歯ソーノーローは嘲笑するように言った。

「はい。私には見えません」加藤という若い刑事が相槌を打った。

「てめーら!」

血液が逆流するほどに逆上し、不自由な肘と膝を彼らに叩き付けた。

「イテッ!このやろう!静かにしろ!」

僕は首をねじられ、脇を固定され、動きを封じられた。

ボンだけはその仕打ちを見て、狂ったように吠え、爪を車のボディーに打ちつけた。

「君は今後自分に不利だと思えることはしゃべらなくてもいい。
つまり黙秘権を行使する権利がある。
しかし、今後話したことは全て証拠として………」

歯ソーノーローがお決まりの台詞を喋っている間、僕は歯を食い縛って、別なことを考えていた。

(奴ら計画的にやりやがったな! 拘留する自信がないんで、汚い手を使いやがったな!)

信号が変わったようだ。
パトカーが発進した。
僕は首だけを回し、ボンを見た。

ボンはやはり付いて来ていた。