ボンの前に置き、今日は“オアズケ”をしなかった。
始めペロペロとミルクを舐めた。
次にガブリとひとかじりを加えた。

良かった。
最近食欲がないので心配していたのだ。

(そうだ、落ち着いてる場合か!?)

110番に連絡した。

スーツを着て、いつでも出勤できる体勢を整えておいた。現場の物は触らなかった。
……きちんと調査してもらいたいからだ。


警官が初め二人来た。
現場を見ると、すぐ応援を頼んだ。
その後、二人の警官、二人の私服と鑑識が来た。

色々聞かれたが、何も知らないとしか、答えようがなかった。

刑事たちは言葉は丁寧だったが、僕を疑っているのは明白だった。

取りあえず署で参考人として事情を聞きたいと言われた。

僕はただでさえ(※死体が転がっていただけで)迷惑しているのに、この申し出である。

しかし断れる雰囲気でないのは一目瞭然だった。
手錠を掛けても連れて行く気だろう。
……それだけは避けたかった。

二人の私服と一緒に、中腰で白手袋をして小さな棒の先に付いている綿球から白い粉を振り撒いている鑑識をよけるようにして、玄関に行った。

ボンはただならぬ雰囲気を察したようで、牙をむきだし吠えた。

私服はボンの届かない範囲によけた。