青春を取り戻せ!

ケースを捨て、ダイヤだけをポケットに入れた。

「泥棒!返せ!」

「人聞き悪いな。これらは僕の薬で稼いだ金の半分ほどだ。つまり、僕の正当な取り分だよ。遠慮無く貰っていくよ」

「わかった。わかったから、早く解毒剤をよこせ!」

と、白木が片手を床に伸ばした。

「いやだよ」

「約束が違うぞ!鬼!畜生!」

「その言葉は、そのまま君に返すよ。君の今話した殺人の話は、このカセット・レコーダーに残らず記録させて貰ったから、下手なことすると墓穴掘ることになるから、よーく覚えておくように」

ジェラルミンケースを掴んだ。4億円はかなり重かった。

出口に向かいながら、痺れた足を引き摺ってうらめしそうに僕に手を伸ばしている白木と、カーペットを舐めるように泣き崩れている未美に向い、

「水槽を見てごらん!」

先程のびていたエンジェル・フィッシュが元気に泳ぎ回っていた。

「アッ!?」

二人の呆けた顔を見て、僕はニンマリと心の中で笑った。

「わかったかい? これはただの筋弛緩剤だから、あと2時間もすれば痺れはとれるよ。
それから老化阻止薬の構造式だけど、君たちの手の内にあったのに気付かなかったようだね?」

「いい加減なこと言うな」