僕は大きな水槽に歩んだ。
「動くんじゃない!」
「君が信用しないから、実演を見せてやろうと思ってね」
水槽の中に、指輪に残っている薬を入れた。
三人は黙したまま水槽の中を覗いた。
何分も経たない内に小さい種類の熱帯魚が一匹、二匹と腹を見せて浮かんできた。
「このエンジェル・フィッシュのようになりたいかい?…失礼、望んでも天使は無理か」
「…わかった。解毒剤をくれ。お願いだ!」
「あげなくもないが、その前に僕の要求を飲んでくれ」
「何だその要求とは、早く言え」
「まずそのぶっそうな物を床に置いてもらおう」
「あなた、駄目ニョ!」
未美は白木のズボンの袖を引っ張った。
「そうだ。我々は対等になっただけだ」
「僕は別にいいんだが、こうしてる間にもどんどん、君たちは死に近付いてるんだよ」
「ウーッ」白木は憎々しげに唸った。
「じゃ、こうしよう。弾丸は君の方、銃身は僕が持つ。これで血を流すことはなくなる」
「…ウゥーン。仕方無い!」
白木は痺れのためにぎこちない手つきで弾倉止め(マガジンストップ)をいじりはじめた。
拳銃が指から滑り落ちた。
それが膝を着いている未美の前に転がった。

