「殺してからゆっくり探す手もあるよ」 

「見付かるもんか!そして今度こそ、おまえ達はムショ行きだよ」

未美は大声で笑うと、
「いいかい、よく聞きなよ。おまえは水島ということになってる。おまえがいなくなっても、水島が一人になるだけなのよ。死体さえ完璧に始末すれば、犬が一匹いなくなったほどにも騒ぎにならないわ」
と、下びた声で言った。

どうもこれほど頭が回るところをみると、彼女が首謀者かも…。

「さぁ言いなさいよ」

といい終わると、彼女はふらふらと不自然に上体を揺らした。そして体を支えるようにテーブルに手を着いた。

やっと薬が効いてきたようだった。もっと効きめの早いのを作らなくちゃなと思った。

ワインに入れた筋弛緩剤(しびれ薬)は、頭はしっかりしたままだが筋肉という筋肉が緩んでしまい、体の自由が効かなくなるという作用があるのだ。

「ど~した?足がふらついてるよ」

「なに馬鹿なこと言って…。ちょっと立ち眩みしただけよ」
と、彼女はぎこちなく言った。

「薬が効いてきたんだよ」

「何だその薬とは?」

「君たちが飲んだワインに毒薬を入れておいたのさ」

「ふざけたこと言うニャニャロ」

と、彼女はろれつのまわらない声で言うと、膝を着いてしゃがんでしまった。

「ほらほら痺れてきただろう?」