ボンは真白な紀州犬で生後3ヵ月の雄である。
うちの研究室の水島講師が「飼犬が子供を四匹生んだのだが、一匹お願いできないかな?君なら可愛がってくれると思うんだが……」と半分押し付けるようにくれたものだった。
ボンはなかなか賢いところもあり、玄関の中にある自分の小屋には絶対に排便しない。
しかし催すと深夜でも早朝でも切羽詰った声で僕を呼んだ。
紀州犬は余り鳴かないのが普通だが、切羽詰まると別のようである。
仕方無く起き出し、でもこういう苦労は生き物を飼う者の最低の義務だと思い直し、それ以上にボンの苦しい肛門のことを思い、戸を開けてやると、彼は一目散に庭に出て用を足してくる。
その意味もあって一日一回の散歩は欠かせなかった。…普段は散歩に出ないと排便しないのだ。
極力自分で行こうと思っているが、忙しくなると隣の優紀に頼んだ。
彼女は見かけより優しい子で、最近は頼まなくても毎日行ってくれているようだった。
優紀の父親は亡くなった僕のおやじの会社の片腕だった人で、現在は彼が切り盛りしている。
切り盛りしていると言う表現がオーバーなくらい小さな設計事務所だったが、昔からの信用で仕事はかなりきているということであった。
だから両親が交通事故でいっぺんに亡くなった後は、なにかと面倒をみてもらっていた。
学生の頃は毎日のように夕飯を御馳走になっていた。
そういうわけで優紀とはお互いひとりっ子という背景もあって、兄妹のような感覚であった。
少なくとも僕は、可愛い妹という感情だった。
うちの研究室の水島講師が「飼犬が子供を四匹生んだのだが、一匹お願いできないかな?君なら可愛がってくれると思うんだが……」と半分押し付けるようにくれたものだった。
ボンはなかなか賢いところもあり、玄関の中にある自分の小屋には絶対に排便しない。
しかし催すと深夜でも早朝でも切羽詰った声で僕を呼んだ。
紀州犬は余り鳴かないのが普通だが、切羽詰まると別のようである。
仕方無く起き出し、でもこういう苦労は生き物を飼う者の最低の義務だと思い直し、それ以上にボンの苦しい肛門のことを思い、戸を開けてやると、彼は一目散に庭に出て用を足してくる。
その意味もあって一日一回の散歩は欠かせなかった。…普段は散歩に出ないと排便しないのだ。
極力自分で行こうと思っているが、忙しくなると隣の優紀に頼んだ。
彼女は見かけより優しい子で、最近は頼まなくても毎日行ってくれているようだった。
優紀の父親は亡くなった僕のおやじの会社の片腕だった人で、現在は彼が切り盛りしている。
切り盛りしていると言う表現がオーバーなくらい小さな設計事務所だったが、昔からの信用で仕事はかなりきているということであった。
だから両親が交通事故でいっぺんに亡くなった後は、なにかと面倒をみてもらっていた。
学生の頃は毎日のように夕飯を御馳走になっていた。
そういうわけで優紀とはお互いひとりっ子という背景もあって、兄妹のような感覚であった。
少なくとも僕は、可愛い妹という感情だった。

